自然あふれる山陽小野田市の魅力を、
サウナを通して、多くの人に広めたい。
夫婦で描いた夢を形にするため、
サウナ施設の運営に心地よい汗を流す日々。

「地元に貢献したい」という妻の思いに触発され、
20年近く勤めた会社を退社し、山陽小野田市へ。
Q.山陽小野田市に移住するまでの経緯を教えてください。

移住する前は、地元の滋賀で化粧品製造の会社に勤めていました。20年近く働いてきたなかで、このまま続けるべきか、新しいことに挑戦するべきかと悩んでいたところ、妻から地元の山陽小野田市でサウナを開業したいという相談を受けました。妻は地元を離れたことで、自然や人の温かさといった山陽小野田市の魅力を再確認。できる範囲で、地域の活性化に貢献したいと思い始めたようでした。2人ともサウナが好きで、よく一緒に施設を回っていたので、漠然とではありますが、いつかサウナのお店をもてたらいいなと思っていたため、相談された時に戸惑いはありませんでした。ただ、最初は夫婦そろって移住する予定でしたが、妻は大津市に残って、自身が経営する美容室を続けることに。結果的に、私が妻の地元の山陽小野田市に移住し、妻が私の地元の滋賀に残るという逆転現象が起きてしまいました(笑)。

Q.移住に対するご家族の反応はいかがでしたか。

両親の第一声は、「寂しい」でした。しかし最終的には、「自分たちで決めたことだから、しっかり頑張ってやりきりなさい」と背中を押してくれました。兄が同居しているので、ある程度は寂しさを軽減できているのかもしれません。

Q.移住する前の山陽小野田市の印象を教えてください。

妻の里帰りで、何度か足を運んだことがありました。その時の印象は、のどかな自然に恵まれていて、景観が滋賀に似ているということ。山がたくさんあって、海が広がっている。といっても、滋賀の場合は大きな湖ですけどね(笑)。また、体験農園「花の海」などの観光スポットも点在しているので、楽しそうだという印象も受けました。少し行けば、角島や元乃隅神社、秋吉台といった名所もあるんですよ。あとはなんと言っても、魚が新鮮で感動しました。スーパーで手頃に売られている刺身がすごく美味しいなんて、もう最高ですよね。

「花の海」は、山陽小野田市でも有数の花の名所。夏はヒマワリ、秋はコスモスが一面を覆う。
Q.移住するにあたり、どのような情報収集をしましたか。

主に住環境について、妻から話を聞いたりインターネットで調べたりしました。より詳しい情報は、妻の里帰りに同行した際に、現地の方々から話を聞きました。たとえばスーパーにしても、ドリンクが安いところや品ぞろえが豊富なところなど、それぞれに特徴があります。そういったローカルな情報は、インターネットではなかなか入手できないため非常に参考になりました。

海や山といった自然の風景に心癒されます。
なかでも、日によって見え方が変わる夕陽は絶景です。
Q.住み始めてからの山陽小野田市の印象を教えてください。

やはり自然が豊かだということは、外せない魅力だと思います。移住するまでは、意識して風景を眺めることはありませんでした。しかし今は、お店の目の前にきれいな海が広がっているので、よく写真を撮っています。特に夕暮れ時が絶景で、同じ色や形の夕陽が一つもありません。高台にある「梶 夕日スポット」に行くと、周辺の緑と一緒に眺めることができます。また、人が親切だということも印象的です。わからないことを、1つ質問したら多くの答えを返してくれるなど、日常のちょっとしたことで人の温かさを感じています。

県道226号沿いにある「梶 夕日スポット」から瀬戸内海を一望。
房野さんが店舗から撮影した夕焼け。日によって空が、さまざまな表情を見せる。
Q.移住にあたり不安はありませんでしたか。

最初は、地域の方々に受け入れてもらえるだろうかという不安がありました。義理の親族以外に知っている人がいなかったので、自分から進んで交流の輪に入るように努めました。妻の同級生の旦那さんがバーを営んでいて、まずはそこへ足を運んでみることに。お店のドアを開ける時は緊張しましたが、店内はアットホームで、最初から歓迎ムードでした。マスターが私のことをお客さんに紹介してくださり、そこから少しずつ人脈を広げることができました。

房野さんの行きつけのバー「GROOVIN」。マスターとは、一緒に食事やドライブに出かける間柄に。
Q.休日の過ごし方を教えてください。

近所の飲食店で、息抜きをすることが多いですね。小野田駅周辺には気になる居酒屋がたくさんあるので、少しずつ開拓していくのが楽しみです。また、業界分析を兼ねて、山口県内のサウナや温浴施設に訪れています。車を所有していますが、汗を流した後のお酒は格別なので電車を利用。移住したばかりの頃は、電車の本数が少なくて不便に感じていましたが、今では時間を逆算して行動するようになったので困りません。車は必要かもしれませんが、電車をうまく活用すると、より快適に暮らせると思います。

Q.移住してからご自身に変化はありましたか。

自然に触れる機会が増えたことで、気持ちにゆとりができました。また、いろいろなお客様と接するなかで、刺激をもらっています。結果的に、ものの考え方がポジティブになり、人間的に成長できたかなと感じています。

知らない場所に移住するのは、心細いことかもしれません。
しかし、新たな出会いをたくさん経験できる醍醐味があります。
Q.現在の仕事について教えてください。

2024年6月にグランドオープンした「瀬戸内サウナかわらで」の店長を務めています。火入れや清掃などの準備から、SNS運用やチラシの配布といった宣伝活動、備品の買い出しまで、現場の業務を1人で行っています。目の前が海という申し分のない環境であるにもかかわらず、サウナを利用する時間をあまり取れないのは、いちサウナーとして悔しいかぎりです(笑)。オーナーである妻とは週に1〜2回の頻度で、事業計画などについてウェブ会議をしています。なかなか手厳しいですが、美容師として長く自身のお店を経営しているので頼りにしています。

2棟のプライベートサウナを設置。房野さんは「デジタル環境に囲まれた日常から抜け出して、自然に身を委ねてください」と話す。
県外や海外の方が利用しやすいように、今後はコテージを設置する予定。
Q.開業準備で大変だったことはありますか。

お店を建てた場所は、お義母さんが代表を務める「高橋瓦工事店」の土地を間借りさせてもらっています。ほかにも候補地はありましたが、やはり抜群のロケーションが決め手になりました。ただ、何もないところに、木や雑草が生い茂っている状態からのスタートでした。コストを抑えるため、芝生を敷いたり花壇を設置したりと、可能な限りお義父さんと2人で準備。初めてのことばかりで苦労しましたが、お義父さんが器用な方なので本当に助かりました。

お店のある津布田地区。山や海が織りなす開放的な景色が広がる。
Q.仕事のやりがいを教えてください。

まだオープンして間もないため、集客方法を考えて、地道に宣伝活動を続ける必要があります。決して楽なことではありませんが、お客様から「最高でした」「また来ます」と温かな声をいただいた時は、頑張ってよかったなとつくづく思います。ありがたいことに、宇部市や下関市、北九州市から足を運んでくださる方も多いんですよ。

「瀬戸内サウナかわらで」で、気持ちよさそうに汗を流すお客さん。
Q.これからこの街で、どのように暮らしていきたいですか。

せっかく山陽小野田の市民になったので、地域の方々との交流を増やして、仕事もプライベートも充実させたいです。地元のお店と一緒にイベントを行うなど、今いる地域を拠点にして徐々に活動の場を広げていき、地元のお店とサウナ、そして山陽小野田市の魅力を全国に発信していけたらいいですね。また、併設しているカフェで地元のお店とのコラボメニューを提供したり、バーベキューのメニューに地のものを使用したりすることで、地産地消にも取り組みたいと思っています。いろいろなアイデアがあるので、なんとか妻を説得して実現させます(笑)。

Q.山陽小野田市に移住を考えている人にメッセージをお願いします。  

何かのついででもよいので、まずは実際に足を運んでみることが一番だと思います。インターネットを使った下調べだけでなく、自分の目で見て、肌で感じて、生の声を聞くことで、現地のことをより詳しく知ることができるはずですから。特に起業を考えている方は、地域ごとの人口や風土、競合店の数など、周辺環境についてあらかじめ把握しておくと、開業後の時間やお金のロスを防ぐことができるのではないでしょうか。

遠いところから移住することは、もしかすると心細いかもしれません。しかしそのぶん、いろいろな人と出会える楽しさがあります。ぜひ自ら積極的に行動して、山陽小野田市での移住生活を満喫してください。

    

※当インタビューは、2024年8月8日に行われたものです。